月別アーカイブ: 2016年8月

経営者が知っておくべき、財務体質の改善方法 その1

企業の規模の大小に関係なく、財務体質の改善方法・ポイントにおいて、基本となる部分があります。今回は、もっとも重要となる貸借対照表項目のうち、資産について、記載していきます。

財務体質改善は、貸借対照表から

ご存知のように、会社の財務諸表は、大きく2つに分けると、財政状態を表す「貸借対照表」経営成績を表す「損益計算書」です。

財務体質の改善については、「貸借対照表」の方に着目していきます。

資産項目について

会社の資産には、様々なものがあります。その中には、すぐにお金として換金しやすいもの、しにくいものがあります。

一般的な会社の貸借対照表は、「流動性配列法」と言って、換金しやすい項目の方が、上に並んでいます。

財務体質改善のためには、資産の換金価値が、正しく表示されている必要があります。

言い換えると価値のない資産は、あってはいけないということです。

価値のない資産

価値のない資産とは、どのようなものを思い浮かべますか?

例えば、回収できる見込みが低い売掛金や、手形、売れる見込みのない商品、時価が大きく下がってしまい塩漬けになっている有価証券など、様々なものがあります。

このように価値のない資産が、貸借対照表に載っていると、どうでしょうか?

例えば、100円の売掛金が貸借対照表に載っていても、実際、回収できる売掛金が80円としたら、貸借対照表の載せる金額は、80円に直さなければなりません。

基準が曖昧な、中小企業の会計

株式を上場した、公認会計士の監査が義務づけれている会社が、会計基準に従い、上記のような価値ない資産は、実際の価値に直されますが、中小企業は、公認会計士の監査が義務づけれておらず、会計基準の適用が会社によって、曖昧になっているケースが多いです。

しかし、貸借対照表を見て、経営者が、正しい経営判断を行うためには、価値のない資産は載せるべきではありません。

資産の現在の価値を洗い直す

そのために必要となることは、まず、資産の価値を把握することが重要です。貸借対照表についての、各科目の内訳書に記載されている資産が、価値があるのかどうかを、定期的に洗い直す必要があります。

例えば、売掛金であれば、回収期日が到来しても、回収できていないものがどれくらいあるか、どれくらいの期間回収されていないか

在庫であれば、原価割れしても、売っているものはないか、長期間売れずに残っている在庫はどれくらいあり、それは、将来、売りことができるのか

といったように資産の項目ごとにチェック事項を設けて、見直してみることが必要です。

会社の現在の財政状態を知る

上記の見直しを行い、資産の価値を直してみて、初めて、あるべき会社の財政状態がわかり、それに基づいて、経営者は、正しい経営判断を下すことができます。

上場企業にとっては、当たり前のことでも、中小企業にとっては、見直しのコスト等の問題もあり、そのままとなっているケースも多くあります。また、大きな会社であっても、経営者は経理部門に丸投げして、自らは全く把握していないケースもあります。

財務体質の改善には、経営者も、会社の資産の現在の価値を、正しく把握している必要があります。


経営コンサルティングについて

経営コンサルティングという仕事は、日本では、まだ、広く浸透していません。経営コンサルティングは、公認会計士の監査業務や、税理士の税務業務のように、資格を持っている人たちだけが、行うことができる独占業務ではなく、資格の有無で業務が制限されることはありません。中小企業診断士や、MBA(経営学修士)を持っていたとしても、それによって、独占的に業務が行える訳ではありません。

経営コンサルティングの目的

企業経営者が、経営コンサルティングを依頼する目的としては、自社だけでは解決できない、経営上の問題を解決するためです。経営上の問題は、大きく分けると以下の2つです。

1.企業の継続・成長のために売上を増やすこと

2.生産性を向上させ、利益を増やすこと

売上を増やす

自社以外のリソースにより、専門的な能力、経験、知見を有している人材を活用することで、問題を打破し、アイデアを得ることで、売上を増やし、企業をより成長させていくことが、経営コンサルティングを利用する第1の目的です。特に規模の小さな企業は、売上を確保していくことが生命線であり、売上を増やすことは、最優先事項となります。

生産性を向上させる

企業が大きくなるに従い、管理業務が増えていきます。いかにこれを、適切・スムーズに行っていくかにより、企業の生み出す利益やキャッシュ・フローは大きく左右されます。従って、企業の規模が大きくなるにつれ、生産性の向上についての、要求水準は高くなります。高度な専門的な能力を有した、外部の人材を活用することで、企業の生産性の水準を引き上げることができます。

どのように経営コンサルタントを活用すべきか

上記の2つの目的を達成するためには、企業の規模や、要求に応じて、適切なコンサルタント(コンサルティング会社)に依頼する必要があります。専門分野や、組織的な対応、海外組織との連携の可否など、企業の要求に応じて、ケース・バイ・ケースでコンサルタント(コンサルティング会社)を選別することになります。

経営コンサルタントは、必要なのか?

経営コンサルタントに依頼しても、最終の意思決定や、決定案の実行は、会社側が行っていくので、経営コンサルタントとの関係は、信頼関係を伴った、良好なものでなくてはなりません。外注を使うという感覚ではなく、共同して、自社を、より良くしていく目的に向かっていかなければなりません。会社の命運にも左右する、プロジェクトを依頼するに値するコンサルタント(コンサルティング会社)であれば、大きな利益を会社にもたらすことになるでしょう。

最後に

会社を取り巻く環境は、激変しており、自社だけでは、荒波を乗り越えていくことが、厳しい時もあるでしょう。そんな時、会社にとって強力な味方となってくれる、経営コンサルタントがいれば、一緒に荒波を乗り越えることができます。


1ドル=100円時代の、経営戦略

日銀の金融緩和による、円安がピークを過ぎて以降、一貫して円高トレンドが続いています。円高というと、マイナス・イメージの方が多いですが、日本経済にとっては、必ずしもマイナスとは言えず、円が信頼され、相対的な価値が高まっていることは、むしろ、好ましいと言えます。

円高が、企業業績を悪化させる流れを断つ

しかし、日本企業は、輸出型の大企業が多く、円高→業績悪化というのが、定式となっています。この流れを絶たないことには、企業の業績予想が、為替に大きく左右されることになってしまい、その結果、株価も下落してしまいます。

そのためには、企業が円高を逆手にとって、業績向上につなげる戦略をとっていくしかありません。将来、これからも円高が進み、たとえ、1ドル=80円になろうとも、業績の悪化を最小限に食い止める戦略をとることが、必要になります。

円高が、株安を招く流れを断つ

金融緩和後は、日銀がETF買いにより、円高による、株価下落の下支えを行っていますが、海外の投資家にとっては、円高になれば、株価は割高となるため、輸出型企業以外も、株価が下落するということも、円高がもたらす大きなデメリットとなっています。

実際は、円高により、業績が悪化しない企業についてまで、株価が下落することは、日本企業の国際競争力を損なうものであり、この流れも絶たなければいけません。

企業への投資というのは、本来的には、投資先企業の成長発展に期待し、その企業を応援するという意図を持って、行われるものであり、そのような投資家をファンとして、取り込まないと、短期間での儲けだけを狙う投機家が、株価の乱高下による利益を得ること目的として、集まってくることになり、株価は安定しません。

また、予測不能の為替の影響により、株価が大きく変動すれば、個人投資家は、怖くて日本企業の株を買う気になれず、個人投資は、ますます冷え込むことになります。

従って、企業側としては、長期的な成長ストーリーを投資家に説明し、ファンとなって、長期保有してくれる投資家を増やしいかなければいけません。

日本電産の強気の経営戦略

そんな中で、日本電産の永守会長兼社長は、円高を逆手に取ったM&Aや、「これほど、業績は上がると言っているのに、今、うちの株を売る人はおかしいんじゃないか」といった発言など、独自の成長戦略を実行し、それを投資家にアピールしています。

永守氏は、日本電産を創業し、1代で年商1兆円を超える企業に成長させた、カリスマ経営者で、その経営手腕は高く評価されており、日本電産は、永守氏の言葉通り、右肩上がりの成長を続けています。今の日本のナンバーワン経営者は?と聞かれたら、私は、永守重信氏の名を挙げます。

この円高の乗りきるには、日銀の金融政策に依存するのではなく、日本電産の永守会長兼社長のように、将来に向けての成長戦略のストーリーを企業経営者が、いかに描き、実行するかが鍵となります。

アベノミクスは、為替バブルだったと考えた方がいい

大胆な金融緩和によって人為的にもたらされた、円安により、企業業績や株価は、一時的に上がりましたが、それは、為替相場によるものであり、為替が円高に振れた、今こそ、日本企業の底力が試される時です。

たとえ円高になろうとも、顧客が増え、いい商品やサービスを出し続けているのであれば、企業価値は、上がっているはずです。

時代の変化に対応するイノベーションを行い、日々進化し続ければ、企業業績はそれに、それに伴ない上昇するでしょう。

しかし、企業が危機感を失い、過去の成功体験に囚われ続けるのであれば、新興のベンチャー企業にとって代われますし、また、そのように新しい産業を引っ張っていくベンチャー企業が、もっと日本から生まれていく必要があります。