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投資で成功するための、財務数値の読み方③

お金がなくなれば、会社は倒産します。財務体質がいい会社というのは、お金をたくさんもっている会社のことです。お金がたくさんあり、借金のない会社が倒産することはありません。従って、財務体質がいい、キャッシュ・リッチの会社は、投資したお金が、紙くずになってしまうリスクが小さいということになります。

財務体質の見方

会社の財務体質を表す指標として、自己資本比率があります。これは、高ければ高い程、財務体質がいいということになります。もちろん、借入により、調達したお金を成長投資に用いることは、会社にとっては、必要ですが、借入の比率が大きくなると、支払利息も大きくなり、借入金を返すために、また、借入れするという負の連鎖にも、なり兼ねません。

また、フリー・キャッシュ・フローという指標があり、これは、企業が営業活動で得たキャッシュ・フローから、通常サイクルの投資を引いた、企業が自由に使うことのできる余剰資金です。このフリー・キャッシュ・フローの大きさが、企業がお金を稼ぐ力と言えます。

株主還元について

しかし、会社の内部にお金を貯め込んでいるだけでは、企業は成長しませんし、株主からの期待に応えることにはなりません。企業の株主還元の方法として、大きく2つあり、配当金を支払う方法と、自社の株式を買うという方法です。

配当金について、株主は、配当利回り(投資額について、どれだけの比率で配当が得られるか)を、最も気にしており、配当利回りが高さは、企業の財務体質がいいことを表します。しかし、配当より、成長性を重視する場合は、配当金へ支出より、会社は、成長投資に多くの資金を充てます。

このように、投資家は、株主還元と、成長投資のバランスを考慮しなければなりません。

ROEとは

最近、よく出てくる指標でROEというものがあります。これは、会社が株主が投資した額から、どれだけの利益を得ているかという、投資効率を表す指標です。日本企業は、持ち合い株式の慣行もあり、アメリカなどと比べて、ROEは低い水準にありますが、ROEの高い会社は、投資額を有効に活用している会社であり、投資家の評価も高くなります。

ROEを高めることは、企業側もお金の使い方が、より上手になることであり、より少ない資金で、より多くのキャッシュをもたらすような、事業を行うということです。

当然、これを高めるためには、事業戦略の巧拙だけでなく、生産性を向上させなければなりません。

デフレは解消されるのか

今の日本の金融政策は、デフレ脱却を目的としていますが、デフレ脱却のためには、生産性をより向上させ、従業員の給料を増やしていく必要があります。ただ、生産性向上のためには、より、多く知恵を使う必要があり、そのために、さらに、多くの時間を要し、なかなか生産性向上も平坦な道のりではありません。

これを解消するために、自社だけの知恵だけでなく、他社の知恵を利用するなど、より、オープンなイノベーションが必要です。また、より、多くの人々が投資に参加し、企業がより、多くの株主の声を取り入れることも必要です。

これらの相互作用によって、企業は、より、良い会社となり、投資が長期に渡り、報われることになるのです。


投資で成功するための、財務数値の読み方②

売上の次に重要な数値として、利益があります。利益と言っても、様々な利益があり、「営業利益」「経常利益」「当期純利益」など同じ利益でも、その内容は異なります。

利益は、売上から、それについて、かかったコストを差し引いたもので、売上以上にコストがかかっていれば、販売しても、お金はどんどん減っていくことになり、商売を継続することはできません。

ここでは、投資の際に留意すべき事項を、いくつか記載します。

様々な利益の違い

まず、売上から、それに関わる原価を引いた利益を、「売上総利益」といい、別名、粗利益とも言います。売上総利益からは、通常、商売を継続するために必要な、販売にために必要な費用や、管理のために必要な費用は、差し引かれていません。そのような費用を差し引いた利益を、「営業利益」と言います。これは、企業が自社の営業から得られる利益です。

営業利益から、配当金や、利息など、営業とは直接関係しない費用を加減した利益を、「経常利益」と言います。経常利益から、臨時的に発生する固定資産の売却損益を加減し、支払う法人税などを差し引いた利益が、最終の「当期純利益」です。

どの利益を見たらいいか

企業の営業上、通常発生する「営業利益」の増減は、企業の事業の成長力を最も反映するものであり、成長力は、営業利益をベースに判定するのが、最も妥当と言えますが、日本企業は、借入金の利息や、配当収入なども、毎期、継続的に発生し、また、為替の差損益も経常利益に反映されるため、経常利益を重視する傾向になります。

PERとは

投資において、PERという指標をよく耳にします。これは、株価収益率のことで、株価を一株当たりの当期純利益で割って算出します。株価が、1株当たりの当期純利益に対して、高いか安いかという目安となり、投資において、最も、重要な指標の一つです。

では、PERが低ければ、株価は必ず割安で、高ければ割高かというと、必ずしも、そうではなく、それは、企業の成長率との兼ね合いとなります。

例えば、PERが、20%であっても、企業の成長率がそれ以上であれば、割安と言えますし、PERが、5%であっても、企業の成長率がそれ以下であれば、割高となります。

実際には、継続的に得られる配当収入も考慮しなければいけないので、PERから、配当利回りを差し引いた比率と成長率と比較して、どちらが高いか、ということになります。

高値づかみを避けるためには

投資で成功するためには、高値づかみは避けなければなりません。そのためには、PERだけでなく、企業の成長率を見極めなければなりません。企業が公表されている計画上の数値から、修正される可能性もあるため、成長率を的確に把握することは、なかなか困難です。

また、PERも、用いれている利益は、当期純利益で、臨時的な損益が加減されたものであり、翌年度に大きく変動することもあり得ます。

これらを考慮しつつ、割安、割高の判断しなければなりません。

次回は、キャッシュについて、記載します。


投資で成功するための、財務数値の読み方 ①

M&Aを行い、企業をもっと成長させたいと考えている経営者の方々だけでなく、資産運用のための株式に投資している個人投資家の方々にとっても、投資先(候補先)の企業を理解し、投資を成功させるために、最低限、理解しておくべき、財務数値のポイントについて、3回に分けて記載します。

投資先の何を重視すべきか

株式の投資を行うことは、投資先の未来に賭けることです。しかし、未来について、予測することは、非常に困難であり、様々な要因が影響し、また、予測通りになるとは限りません。それでも、成功率を高めるためには、事前調査を行うことが、どうしても必要です。

投資をする場合、過去の実績だけでなく、企業の今後の成長性をいかに見極めるかが、投資の成否の大きな鍵となります。

企業の成長性を何で測るか

企業の成長性を測る項目として、第1にあげられるのは、売上高です。

売上が増えている企業は、いい商品、サービスを世に出し、お客様が増え続け、成長している企業です。上場会社であれば、売上高の推移や、将来の予算、計画が出ているので、それらから、何%程、売上高が年々増加しているのかを読みとることができます。

ただ、為替の影響により、顧客数は減っても、売上が伸びていたり、原材料の単価に上昇に伴い、販売単価が上がっているケースもありますので、売上増加=顧客増加という訳では、必ずしもありません。為替や、原材料単価の影響が大きい場合、年度単位で、大きな売上高の波がある場合もあります。

業界の特色を知る

従って、まずは、その業界や、企業のビジネスをよく知ることが、財務諸表の数字を理解する前に、重要になります。

とは言え、会社によって、様々なビジネスがあり、全ての業界を理解することはなかなか難しいことです。投資の神様と言われているウォーレン・バフェットでさえ、自分が理解できない事業には、投資しない(例えば、ハイテク業界)方針を貫いています。

よく通じている分野に対して、掘り下げる調査することで、他の投資家に対して、情報の面で優位に立つことができます。

現場を見る

また、ただ、公表されている数字だけを見ていても、会社の実態はなかなか把握することはできません。売上の予算を確認するのではなく、販売の現場を実際に見ることで、数字の心証を得ることができます。

例えば、小売業のチェーン店であれば、店舗を覗くことは、容易にできますし、商品が飲食品であれば、実際に食べてみて、味を確認することで、実際に売上が増えていくことに納得感を得ることができるでしょう。

販売は商売の肝

このように、商売繁盛の肝は、販売が好調であるかどうかであり、それについて裏付けが得られれば、その会社は、将来、ある程度は、成長が見込めると考えられます。

もちろん、技術革新の進歩は早く、長期的(3年以上)の予測は、それだけでは難しいです。従って、常に環境変化に、気を配る必要があります。

第2回目は、利益について、記載します。


CFOの役割

日本企業において、CFO(最高財務責任者)というポジションを設ける企業は、増加してきています。今までは、財務、経理部長といったポジションが一般的でしたが、欧米にならい、CFOという、肩書きを使うことが多くなっており、特にベンチャー企業にその傾向は強いです。

CFOとは

CFO(chief financial officer)とは、文字通り、企業における財務の最高責任者であり、企業の財務、経理を総括するポジションです。

財務、経理というと、管理業務という意識も根強いですが、最近では、財務を戦略的に行い、企業経営に活かしていくため、CFOの役割が見直されています。

CFOは、財務、経理の専門性だけでなく、経営について理解していることが求められます。経営戦略自体は、CEO(chief executive officer)の仕事ですが、それを財務面から、サポートしていくのがCFOの仕事です。

CFOは、CEOほど、会社の前面に立つことはないですが、会社を影から支える重要なポジションです。

CEOとの関係

いい会社には、いいCEOとそれを支える、いいCFOがいます。CEOが、財務の専門家であるという会社は、稀で、財務面は、どちらかというと苦手とされているCEOも多くいらっしゃいます。

そのCEOに代わって、財務面を取り仕切るのがCFOの役目です。

企業において、財務は、決して軽視できるものではなく、財務の甘さが企業の存続を危うくさせるケースも多くあります。

いいCFOは、経営戦略の一貫として、財務戦略を考えており、木を見て、森を見ないということがないよう、会社の全体像と、方向性を常に把握しています。

日本において、CFOは、まだ、根付いていない

しかし、日本の会社において、このようないいCFOを抱えている会社は多くはなく、そのような人材を育成していくことは、大きな課題と言えます。

時には、CEOに意見を述べ、説得させることがCFOには、必要であり、それだけの力を持った存在を、企業内に育成することは、なかなか大変なことです。

会計+ビジネスセンスを磨く

では、そのようなCFOを育成するためには、どうすべきかというと、もちろん、経理、財務のスキルは重要なのではなく、自分自身で、新しい事業の立ち上げや、事業買収の立案、交渉を行うなどの、経営の感覚も身につける必要があります。

CFOは、もちろんCEOに取って代わることはできませんが、CFOは、CEOにとっては、いなければ困る存在です。

CEOとCFOが力を合わせることで、会社はより良くなるはずです。