今回は、経営者が知っておくべき財務体質の改善方法の最後に、損益項目について、記載します。
利益と、現金増減のズレに注意
会社が作成する損益計算書には、当期は、それだけ儲かったという、利益がどれだけかが表示されます。しかしこの、利益が現金の増減と、直接一致はしません。なぜなら、利益が計上されるタイミングと、現金収支のタイミングが異なるからです。
従って、利益の計上されるタイミングと、現金の出入りのタイミングのズレは注意する必要があります。例えば、法人税は、当期の利益に対して、計算し、支払いますが、支払うタイミングは、翌期になり、例えば、前期、多くの利益が計上されていれば、翌期に払う税金は、例え、翌期が急に赤字になったとしても、多くの税金は払わなければならないということです。
資金繰りを考えるにあたっては、この、タイミングのズレに注意しておく必要があります。「黒字倒産」ということも、現実的にあり得る話なのです。
粗利益の把握は、適切か?
粗利益というと、売上から、売上原価を引いたもの言います。その際は、売上は、明確に区分できますが、原価の方を区分するのは、なかなか難しいです。売上原価と、販売管理費について、同じ勘定科目でも、両方に跨るものもあります。
売上原価は、商品・サービスを提供する際に、販売に先立って、必要とされる経費であり、商品を販売するに当たっては、商品を仕入れたり、製造するために必要となる費用であり、サービスであれば、サービスを提供するために、必要である費用です。また、売上に比例して、増減する変動費と、売上に関わらずに、定額に発生する固定費があります。
粗利益を適切に把握することで、売上に対する粗利益率を算出することができ、採算性や、効率性を図ることができます。また、販売価格の算定においても、原価を正しく把握することが、重要となります。
販売管理費について
販売管理費についても、変動費の性質のもの、固定費の性質のものがあります。販促費であれば、売上に比例するでしょうし、本社の地代などは固定的に発生します。
交際費、広告費といった費用は、景気が悪くなると、カットされがちですが、売上に比例する、販売促進の効果がある変動費であれば、カットすることがさらに、売上の低迷に繋がる可能性もあり、そのあたりの見極めも重要になります。
また、研究開発費は、売上原価ではなく、販売管理費に計上されますが、研究開発費についても、毎期、一定額以上支出することで、将来の売上の増加に繋がることが期待される費用であり、こちらの支出についても、どれだけ支出すべきかといった判断が、重要となります。
利益の使い方
当期の儲けを、翌期以降、どのように使っていくも、重要な財務戦略です。配当や、設備投資、人材の増強など、企業の将来のビジョンに沿った使い方を決めていかなければなりません。
先日、麻生財務相が、留保利益に課税することも必要だ、との発言をされていましたが、利益をどれだけ、企業内に残し、どれだけを株主還元や投資に当てるかといった戦略も、日本企業にとって、重要性が増してきています。
以上、財務体質改善について、大まかではありますが、資産、負債、損益について、記載いたしました。